クヌギ(櫟)の花(雄花) 薬草園提供
ドングリは、団栗あるいは無食子と書く。広義には、ブナ科(Fagaceae)の果実の俗称であり、秋になると盛んに聞かれる呼び名である。狭義には、クリ(栗)、ブナ(橅、山毛欅)、イヌブナ以外のブナ科の果実を差す。最も狭義には、ブナ科のうちのカシ(樫)、ナラ(楢)、カシワ(柏)など、コナラ属樹木の果実の総称である。
ドングリは、一部または全体を、殻斗(かくと)に覆われている堅果である。ブナ科の果実に共通した特徴で、またブナ科にほぼ固有の特徴と言える。
ブナ科の果実には、「どんぐり」以外の固有の名称を持つものがある。栗の果実は「栗の実」とも呼ばれる。また椎の実、楢の実の呼び方もある。ブナの果実を「そばぐり」と呼ぶこともある。蕎麦の果実の形に似ているからである。
ドングリは種子ではない。樹種によって形は多様である。ブナ科の果実の共通の特徴としては、先端が尖っている。また、表面の皮が硬く、上部がすべすべしており、茶色である。下部は、ぶつぶつ、あるいはざらざらした感触で、薄い褐色である。下部または全部を覆う椀状や毬状のものが殻斗と呼ばれ、総苞片が変化したもの。俗に帽子とか袴または、お椀とも呼ぶ。
内部にある種子の大部分を占める子葉には、デンプン質が豊富にある。人を含み、動物の食料になっている。熊や鹿、栗鼠(リス)、ネズミなど森の生き物たちのごちそうだ。また、日本の古典的な玩具、特に独楽などの材料になっている。
トトリムク(????)は朝鮮の伝統食品の一種である。ドングリの澱粉を固めた食品で、「ムク」とは澱粉を固めた食品を指す。トトリムクは、耕地が乏しく、ドングリなど木の実が豊富な朝鮮半島の山間部で生まれた。食料が不足していた時代や飢饉の年に食べられた救荒食物であり、食糧不足にあった朝鮮戦争の頃に広く食べられた。次第に貧困の象徴として認識され需要が低下した。だが近年健康食品として見直され、粉末が大量生産されて市場に流通している。
カシ豆腐というのが高知県の安芸市にある。天日干ししたアラカシの実(ドングリ)を用いて作られる。外殻を除いた実の渋を抜き、細かく挽いて水を加えて煮詰めて型に入れて作り、ぬたをかけて食べる。土佐国の戦国大名であった長宗我部元親が、朝鮮出兵の際に日本に連行した捕虜が伝えたものだという。
クヌギ(Quercus acutissima)は、ブナ科コナラ属の落葉高木である。クヌギと読む漢字は10個以上あってどれを使うか悩む。櫟、椚、橡、櫪などであるが、それぞれ別の意味も持っている。
クヌギは、山地などに生えており、雑木林の景観をつくり出す代表的な樹種として知られる。樹皮からしみ出す樹液にカブトムシなどの昆虫が集まり、実はドングリと呼ばれて、材は薪や家具など、さまざまに利用されている。
和名のクヌギの語源は、国木(くにき)または食之木(くのき)からという説がある。古名は「つるばみ」と呼んだ。
日本では、東北地方の岩手県、山形県以南の本州、四国、九州の各地に広く分布し、沖縄の一部でも植栽が可能である。低山地や平地で照葉樹林に混成して生え、関東地方ではコナラやアカシデなどとともに、雑木林を構成する代表的な樹種である。薪炭目的の伐採によって、この種などの落葉樹が優先する森林が成立する場合があり、里山と呼ばれるのはこのような林である場合が多い。
山陽地方に特に多いクヌギの仲間にアベマキ(Quercus variabilis)がある。岡山県の方言でアベはアバタの意味でアバタとは「凸凹した」の意味。マキは「薪」「真木」を意味する。ブナ科の仲間を薪炭用材として人為的に植えられたものは多い。里山の代表的な構成と認められて来たため、近年の広葉樹の植樹の際には、主にクヌギが選ばれることが多い。
新緑と紅葉が美しい。紅葉の葉色は、緑色から黄変して茶色へと変わる。その後、完全な枯葉になっても離層が形成されないため、枝からなかなか落ちず、2月くらいまで枝についていることがある。同属のカシワと同じである。
花は、雌雄別の風媒花で、4月から5月に咲く。雄花(上の写真)は、黄褐色の10 cmほどの穂状で垂れ下がる。雌花は、上部の葉の付け根に非常に小さい赤っぽい花をつける。雌花は受粉して果実となる。
果実は堅果で、他のブナ科の樹木の実とともにドングリと呼ばれる。ドングリの中では大きい方で、ほぼ球形で直径が約2 cmとなる。椀型の殻斗につつまれ、殻斗の回りに線状の鱗片がたくさん着く。実は渋味が強いため、そのままでは食用にならない。ドングリは硬い殻や渋み成分のタンニンで抵抗するが、虫もドングリを食べる。ハイイロチョッキリは枝についた若いドングリに産卵して、チョキンと枝先を切り落としてしまう。シギゾウムシなどの幼虫もどんぐりを食べて育つ。
ドングリは、一部または全体を、殻斗(かくと)に覆われている堅果である。ブナ科の果実に共通した特徴で、またブナ科にほぼ固有の特徴と言える。
ブナ科の果実には、「どんぐり」以外の固有の名称を持つものがある。栗の果実は「栗の実」とも呼ばれる。また椎の実、楢の実の呼び方もある。ブナの果実を「そばぐり」と呼ぶこともある。蕎麦の果実の形に似ているからである。
ドングリは種子ではない。樹種によって形は多様である。ブナ科の果実の共通の特徴としては、先端が尖っている。また、表面の皮が硬く、上部がすべすべしており、茶色である。下部は、ぶつぶつ、あるいはざらざらした感触で、薄い褐色である。下部または全部を覆う椀状や毬状のものが殻斗と呼ばれ、総苞片が変化したもの。俗に帽子とか袴または、お椀とも呼ぶ。
内部にある種子の大部分を占める子葉には、デンプン質が豊富にある。人を含み、動物の食料になっている。熊や鹿、栗鼠(リス)、ネズミなど森の生き物たちのごちそうだ。また、日本の古典的な玩具、特に独楽などの材料になっている。
トトリムク(????)は朝鮮の伝統食品の一種である。ドングリの澱粉を固めた食品で、「ムク」とは澱粉を固めた食品を指す。トトリムクは、耕地が乏しく、ドングリなど木の実が豊富な朝鮮半島の山間部で生まれた。食料が不足していた時代や飢饉の年に食べられた救荒食物であり、食糧不足にあった朝鮮戦争の頃に広く食べられた。次第に貧困の象徴として認識され需要が低下した。だが近年健康食品として見直され、粉末が大量生産されて市場に流通している。
カシ豆腐というのが高知県の安芸市にある。天日干ししたアラカシの実(ドングリ)を用いて作られる。外殻を除いた実の渋を抜き、細かく挽いて水を加えて煮詰めて型に入れて作り、ぬたをかけて食べる。土佐国の戦国大名であった長宗我部元親が、朝鮮出兵の際に日本に連行した捕虜が伝えたものだという。
クヌギ(Quercus acutissima)は、ブナ科コナラ属の落葉高木である。クヌギと読む漢字は10個以上あってどれを使うか悩む。櫟、椚、橡、櫪などであるが、それぞれ別の意味も持っている。
クヌギは、山地などに生えており、雑木林の景観をつくり出す代表的な樹種として知られる。樹皮からしみ出す樹液にカブトムシなどの昆虫が集まり、実はドングリと呼ばれて、材は薪や家具など、さまざまに利用されている。
和名のクヌギの語源は、国木(くにき)または食之木(くのき)からという説がある。古名は「つるばみ」と呼んだ。
日本では、東北地方の岩手県、山形県以南の本州、四国、九州の各地に広く分布し、沖縄の一部でも植栽が可能である。低山地や平地で照葉樹林に混成して生え、関東地方ではコナラやアカシデなどとともに、雑木林を構成する代表的な樹種である。薪炭目的の伐採によって、この種などの落葉樹が優先する森林が成立する場合があり、里山と呼ばれるのはこのような林である場合が多い。
山陽地方に特に多いクヌギの仲間にアベマキ(Quercus variabilis)がある。岡山県の方言でアベはアバタの意味でアバタとは「凸凹した」の意味。マキは「薪」「真木」を意味する。ブナ科の仲間を薪炭用材として人為的に植えられたものは多い。里山の代表的な構成と認められて来たため、近年の広葉樹の植樹の際には、主にクヌギが選ばれることが多い。
新緑と紅葉が美しい。紅葉の葉色は、緑色から黄変して茶色へと変わる。その後、完全な枯葉になっても離層が形成されないため、枝からなかなか落ちず、2月くらいまで枝についていることがある。同属のカシワと同じである。
花は、雌雄別の風媒花で、4月から5月に咲く。雄花(上の写真)は、黄褐色の10 cmほどの穂状で垂れ下がる。雌花は、上部の葉の付け根に非常に小さい赤っぽい花をつける。雌花は受粉して果実となる。
果実は堅果で、他のブナ科の樹木の実とともにドングリと呼ばれる。ドングリの中では大きい方で、ほぼ球形で直径が約2 cmとなる。椀型の殻斗につつまれ、殻斗の回りに線状の鱗片がたくさん着く。実は渋味が強いため、そのままでは食用にならない。ドングリは硬い殻や渋み成分のタンニンで抵抗するが、虫もドングリを食べる。ハイイロチョッキリは枝についた若いドングリに産卵して、チョキンと枝先を切り落としてしまう。シギゾウムシなどの幼虫もどんぐりを食べて育つ。
当園にクヌギとコナラが植栽されているが樹皮の特徴には大きな違いがないようだ。クヌギ、コナラ、ミズナラ、アベマキの樹皮はボクソク(樸樕)という生薬になる。これらの4種類の樹皮を用いた生薬が日本薬局方に今も収載されている。
熊本大学の薬草園のサイトによると、クヌギなどの樹皮は、駆瘀血(くおけつ:体の血の滞りを消す)、止瀉(下痢止め)、解毒作用があり、腫瘍、痔、下血、打ち身、下痢などに用いられる。漢方処方では、十味敗毒湯、治打撲一方などに配合される。材はシイタケ原木栽培の榾木として、コナラとともに最も利用される。媒染剤、なめし皮剤としても利用される。また、良質の木炭ができる。
熊本大学の薬草園のサイトによると、クヌギなどの樹皮は、駆瘀血(くおけつ:体の血の滞りを消す)、止瀉(下痢止め)、解毒作用があり、腫瘍、痔、下血、打ち身、下痢などに用いられる。漢方処方では、十味敗毒湯、治打撲一方などに配合される。材はシイタケ原木栽培の榾木として、コナラとともに最も利用される。媒染剤、なめし皮剤としても利用される。また、良質の木炭ができる。
ドングリ、トチの実など(左)とシバグリ(右)
備長炭の材料として知られるウバメガシは、沿岸地域の急傾斜地などに生育する常緑の木本である。カシの仲間で、ウバメガシのドングリはひしゃげている。ウバメガシのドングリの中に2枚の子葉がはいっている。この子葉は、栄養の貯蔵庫であり、普通は土の中に埋もれたままで地上には出てこない。ドングリが土に埋まっていない場合には殻が壊れると緑になって子葉らしくなる。子葉は夏には栄養分を出し尽くして枯れる。
クリ(栗)は、ブナ科クリ属の木の一種である。クリのうち、各栽培品種の原種で山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と呼ばれている。栽培品種はシバグリに比べて果実が大粒である。シバグリも一部であるが栽培される。
クリは、日本と朝鮮半島南部が原産である。北海道西南部から本州、四国、九州の屋久島まで、および朝鮮半島に分布する。暖帯から温帯域に分布し、特に暖帯上部に多産する場合があり、これを「クリ帯」という。北海道では、石狩低地帯付近まであるが、それより北東部は激減する。日当たりの良い山地、丘陵などに自生するが、広く栽培されているため、自然分布との境目が判りにくい。
中国大陸東部、台湾でも栽培されている。1976年、20世紀最大となった唐山地震が起こった地域は栗の産地である。近くの港の天津から日本へ輸送されるために、「天津甘栗」として知られるようになった。
シイ(椎)は、ブナ科クリ亜科シイ属の樹木の総称である。シイ属は主にアジアに約100種類が分布し、日本はこの属の分布北限となっており、2種が自生する。ほかに日本ではシイ属に近縁のマテバシイ属のマテバシイもシイの名で呼ばれている。ブナ科に属し、果実はいわゆるドングリに含まれるが、食用に適しているため、個別に『椎の実』と俗称される。
日本のシイ属には2種のシイが分布する。暖帯の平地における普通種で、琉球列島、九州から本州にかけての照葉樹林の代表的構成種で照葉樹林で多く見られる。都市部でも神社の境内などにある。大きいものは25mにも達し、樹冠が丸く傘状になる。葉は同じブナ科の常緑樹であるカシ類と比べ小さめで、つやのある深緑、やや卵形で先端が伸びた鋭尖頭、全縁あるいは弱い鋸歯がある。また葉の裏は金色がかって見える。果実は完全に殻斗につつまれて熟し、それが裂けて外に出る。果実は小型で黒く、殻を割ると中の種子は白く、生で食べるとやや甘みがある。
ツブラジイは関東以西に分布する。果実は球形に近く、スダジイに比べ小さい。
スダジイは、シイ属の中では最も北に進出してきた種であり、大きな木では、樹皮に縦の割れ目を生じる。福島県、新潟県の佐渡島にまで生育地がある。果実は細長い。
椎の実は、縄文時代には重要な食料であったといわれる。現在でも博多の放生会や八幡(北九州市)の起業祭といったお祭りでは炒った椎の実が夜店で売られる。生でも食べられるが、軽く煎って食べることが多い。紙袋に入れて電子レンジで加熱するのもよい。食べるにあたってはまず水で洗い、浮いてきた虫食いの実を捨ててから用いる。
クリ(栗)は、ブナ科クリ属の木の一種である。クリのうち、各栽培品種の原種で山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と呼ばれている。栽培品種はシバグリに比べて果実が大粒である。シバグリも一部であるが栽培される。
クリは、日本と朝鮮半島南部が原産である。北海道西南部から本州、四国、九州の屋久島まで、および朝鮮半島に分布する。暖帯から温帯域に分布し、特に暖帯上部に多産する場合があり、これを「クリ帯」という。北海道では、石狩低地帯付近まであるが、それより北東部は激減する。日当たりの良い山地、丘陵などに自生するが、広く栽培されているため、自然分布との境目が判りにくい。
中国大陸東部、台湾でも栽培されている。1976年、20世紀最大となった唐山地震が起こった地域は栗の産地である。近くの港の天津から日本へ輸送されるために、「天津甘栗」として知られるようになった。
シイ(椎)は、ブナ科クリ亜科シイ属の樹木の総称である。シイ属は主にアジアに約100種類が分布し、日本はこの属の分布北限となっており、2種が自生する。ほかに日本ではシイ属に近縁のマテバシイ属のマテバシイもシイの名で呼ばれている。ブナ科に属し、果実はいわゆるドングリに含まれるが、食用に適しているため、個別に『椎の実』と俗称される。
日本のシイ属には2種のシイが分布する。暖帯の平地における普通種で、琉球列島、九州から本州にかけての照葉樹林の代表的構成種で照葉樹林で多く見られる。都市部でも神社の境内などにある。大きいものは25mにも達し、樹冠が丸く傘状になる。葉は同じブナ科の常緑樹であるカシ類と比べ小さめで、つやのある深緑、やや卵形で先端が伸びた鋭尖頭、全縁あるいは弱い鋸歯がある。また葉の裏は金色がかって見える。果実は完全に殻斗につつまれて熟し、それが裂けて外に出る。果実は小型で黒く、殻を割ると中の種子は白く、生で食べるとやや甘みがある。
ツブラジイは関東以西に分布する。果実は球形に近く、スダジイに比べ小さい。
スダジイは、シイ属の中では最も北に進出してきた種であり、大きな木では、樹皮に縦の割れ目を生じる。福島県、新潟県の佐渡島にまで生育地がある。果実は細長い。
椎の実は、縄文時代には重要な食料であったといわれる。現在でも博多の放生会や八幡(北九州市)の起業祭といったお祭りでは炒った椎の実が夜店で売られる。生でも食べられるが、軽く煎って食べることが多い。紙袋に入れて電子レンジで加熱するのもよい。食べるにあたってはまず水で洗い、浮いてきた虫食いの実を捨ててから用いる。
左から、静岡県立大学で拾った椎(スダジイ)の実、煎った椎の実、煎って剝いた椎の実、煎ったスダジイと湯がいたマテバシイ
画像説明文
静岡県立大学薬学部薬草園のドングリたち 左から、クヌギ、トチ、マテバシイ
駒を作ってみました。やはりクヌギの実の駒がよく廻ります。
尾池 和夫
薬学部の薬草園サイトはこちらからご覧ください。
https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~yakusou/Botany_home.htm
キャンパスの植物は、食品栄養科学部の下記のサイトでもお楽しみいただけます。
https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/four_seasons/
下記は、大学外のサイトです。
熊本大学薬学部薬草園のサイト
https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003603.php
静岡新聞「まんが静岡のDNA」の記事でも薬草園を紹介しました。
https://www.at-s.com/news/article/featured/culture_life/kenritsudai_column/742410.html?lbl=849
https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~yakusou/Botany_home.htm
キャンパスの植物は、食品栄養科学部の下記のサイトでもお楽しみいただけます。
https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/four_seasons/
下記は、大学外のサイトです。
熊本大学薬学部薬草園のサイト
https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003603.php
静岡新聞「まんが静岡のDNA」の記事でも薬草園を紹介しました。
https://www.at-s.com/news/article/featured/culture_life/kenritsudai_column/742410.html?lbl=849